このページでは子どもと新型コロナウイルス感染症の関係をお話しします。
信頼できる情報をもとに記載していますが、この未知のウイルス感染症に関わる知識や情報が刻一刻と変化しているので、あくまでも記載当時の情報の「まとめ」としてご覧ください。
(令和3年4月27日)
新型コロナウイルスオミクロン株の特徴(令和4年1月20日現在)
ここ数日、静岡市内でも新型コロナウイルス感染症が急増しています。当院でも数名の小児の陽性者がみられました。
おそらくオミクロン株が主流の感染と思われます。そこでここまでわかっているオミクロン株の特徴をまとめてみました。
①咽頭痛を訴えることが多い。他に発熱、だるさなど、一般的な「かぜ」と区別がつきにくい。
以前の新型コロナのように味覚・嗅覚障害はほとんど見られない
②上気道炎(せき、はな)が多く、肺炎になることはまれ
③感染力は強い
マスクを外していると感染しやすい
④潜伏期間は平均2.8日、1週間以内に発症するのが99%
⑤新型コロナワクチンの有効性は不明
2回接種してあってもかかる例は多い
2回接種してあると咽頭のウイルス量が少なく、感染力は低下するらしい
3回接種できればそれなりに効果が期待できそう
⑥流行の始まりからピークは2〜3週間くらいでその後増加スピードよりゆっくり減少していく
静岡はピークの始まりが1月5〜7日頃だから、1月末がピークか?
⑦基本的な対策はこれまでと同様
マスク
手洗い
三密を避ける
これまでの流行は小児では中学生や高校生が多かったのですが、1月になってからの当院での陽性者は、こども園通園のこどもが3名いて(他に小学生2名)、感染の低年齢化が心配されます。軽症や無症状の感染者が多いため、大人が家庭や園に持ち込み、そこで子供が感染しているようです。症状は軽症であることが多いですが、家庭にいる高齢者に感染すると重症化する可能性があります。
上の3名はそれぞれ、保育士さん、お父さん、お母さんからの感染が推定されました。周りの大人の発熱やかぜ症状は要注意です。また、小学生以上では部活動での他校との交流や試合、他の学校の生徒がいる学外の活動や塾に注意が必要です。
(令和4年1月20日)
デルタ株をめぐって
8月中旬から9月初めまでは静岡市内でも新型コロナウイルス感染症が猛威をふるいましたが、おそらくその主体はデルタ株だと思われます。以前のこの欄で「変異株は子供に感染しやすいかも」と記しましたがその通りで8月から9月の流行(第5波)では小児の感染の割合がこれまでより多くなりました。
下の表は静岡市HP「市内における発生状況」で発表されたデータをまとめたものですが、昨年から本年8月23日までに判明した感染者の中で、20歳未満は11.8%でした。
それが第5波流行とともに感染者の総数も増えましたが、20歳未満の割合も16〜25%と増加して第4波までに比べると未成年が感染しやすい状況が明らかになりました。
日付 |
患者数 |
10歳未満(%) |
10歳代(%) |
8月23日以前 |
3195 |
96 (3.0) |
281 (8.8) |
8月24〜26日 |
313 |
16 (5.1) |
46 (14.7) |
8月27日〜9月2日 |
964 |
59 (6.1) |
118 (12.2) |
9月3日〜9日 |
921 |
101 (11.0) |
130 (14.1) |
9月10日〜16日 |
223 |
29 (13.0) |
22 (9.9) |
9月17日〜23日 |
101 |
7 (7.0) |
9 (9.0) |
感染経路については発表されていませんが、全国の傾向としては家族からの感染が多く、そのほかには児童クラブ、保育園や学校、中高生のクラブ活動でのクラスターが報告されています。
当院でも児童クラブでの感染やクラブ活動での感染(他校との試合、大会への参加)が疑われる例を経験しました。デルタ株は従来株に比べて子供同士の感染が起こりやすのかもしれません。
現在は感染の流行が落ち着きつつありますが、今後どうなるかのはわかりません。発症予防、重症化予防にはワクチンが有効ですが、未成年の接種はまだ不十分ですし、11歳以下は接種の対象になっていません。
まずは成人が感染を予防して子どもに感染させないことが重要です。
感染対策は大人も子どもも同じです。すなわち
①室内ではマスク着用*
②こまめな手洗い
③三密を避ける
*学校では屋外の活動ではマスクはしなくてもよい、ということになっています。3歳未満の子どもでマスクを嫌がる場合でも、②③は実行して欲しいですし、一緒にいる大人は子どもの前ではマスクをつけていた方がいいでしょう。
(令和3年9月30日)
新型コロナワクチンの副反応(若年者の場合)①
静岡市では7月21日に市長の記者会見があり、国からのワクチン供給量が減少するため、8月中旬以降の接種対象者は
・60歳以上の未接種者
・59歳以下の基礎疾患のある人
・障害福祉サービス利用者・施設従事者など
に限定され、一般の中高生(12歳以上)の接種は先送りになりました。
少し時間ができたので、若年者の新型コロナワクチンの副反応について書いておこうと思います。
昨年の暮れから米国で12歳から15歳でのファイザー社ワクチンの治験が行われて、有効性は16歳以上と同等かそれ以上だったことは以前記載しました。その際には「副反応も同程度だったとのことです」と書きましたが、5月31日の厚労省の会議で詳細が明らかになりました。
それによると接種部位の痛み、疲労感、頭痛、悪寒、発熱などは16歳から25歳以上に比べるとわずかに多いようですが、「全体的な傾向は16〜25歳のものと同様であった」と結論づけています。あらためて見ると接種部位以外の筋肉痛(2回目で32.4%)や関節痛(2回目で15.8%)が意外と多いことを知りました。ただし16歳以上の方よりは少ないです。図表にも書いてあるように、発熱は海外では38℃以上でカウントされているので、37.5℃以上と発熱とカウントする日本より頻度が少なくなっています。
(令和3年7月23日)
新型コロナワクチンの副反応(若年者の場合)②
新型コロナワクチンの副反応はいつごろ出現して、どれくらい続くのでしょうか?
若年者に限定した検討はされていませんが、先行接種した医療従事者約2万人の追跡調査の成績が明らかになっています。それを見ると注射した部位の痛み、しこり、かゆみなどは接種当日から症状の出る人もいますが、接種翌日が一番症状の出現する割合が多く、1回目の接種後より2回目の接種後で頻度が高くなっています。
これは発熱、頭痛、疲労感、鼻水などの全身症状も同じ傾向です。20歳代に限定すると2回目の接種後で発熱(37.5℃以上)50%、疲労感70%、頭痛60%と高率です。
症状の持続期間については「どの症状も2〜3日で消失する」と記載してあることが多いですが、注射部位の症状も全身症状も中には5日くらい続く方がいるようです。
新型コロナワクチンを接種した後、特に2回目で副反応の頻度が高くなるのは若年者も同じ傾向で中高年の方よりも頻度が高いようです。また、症状の持続期間も様々なので接種を希望される方は授業、試験、あるいは部活の試合などの日程を考慮に入れて接種するタイミングを検討してください。
ワクチンの仕組みも新しく、使い始めて1年余りなので、長期的な効果や副反応、後から出てくる副反応があるのかは、まだわかりません。少なくともこれまでの調査では新型コロナワクチンを接種して流産するとか不妊になることはないとされています。
新型コロナワクチンの有効性は高く、自分が感染しない、周りに感染させない、というワクチン本来の効果は素晴らしいものです。しかし副反応は多く、長期的な効果や副反応はまだわかっていないのも事実です。ここ何回かの記事がワクチン接種をするかどうかの判断材料になれば幸いです。
(令和3年7月23日)
新型コロナウイルスワクチン接種後の心筋炎・心膜炎(追記)
前回の記事で新型コロナウイルスワクチン接種後に心筋炎を起こすことがある、と書きましたが、その後の情報をまとめます。
日本国内では6月27日までにファイザー 社の新型コロナワクチン接種後に19例の心筋炎・心膜炎の報告がありました。その時期までのファイザー社製ワクチンは約3900万回接種されているそうです。
日本循環器学会が厚生労働省に提出した報告を見ると心筋炎はアメリカでは30歳以下の接種者の0.0005%、イスラエルでは接種者全体の0.006%の発生率です。
一方、若年者では軽症者あるいは無症状の新型コロナウイルス感染の合併症として急性心筋炎が報告されています。アメリカの若年者のアスリートで新型コロナウイルス感染者1597名について観察したところ37名(2.3%)に無症状あるいは軽症の心筋炎を認めました。
以上のことから日本循環器学会は次のようにまとめています。
・急性心筋炎・心膜炎が新型コロナワクチン接種後に発生する頻度は極めて稀。
・新型コロナワクチン接種後の急性心筋炎・心膜炎は軽症が主体
・若年者では新型コロナウイルス感染後に無症状の急性心筋炎・心膜炎発症の可能性がある
・新型コロナワクチン接種で感染・重症化予防を図るメリットの方が、新型コロナワクチン接種後の急性心筋炎・心膜炎に対する懸念よりも圧倒的に大きい
・日本循環器学会としては、新型コロナワクチン接種後に発症することが懸念されている軽度の心筋炎・心膜炎は、現在のワクチン接種体制および通常の循環器診療 体制で対応可能と考える
新型コロナウイルスワクチン接種後の心筋炎、心膜炎の特徴は、
・2回目の接種4〜8日後に発症することが多い
・若年男性に多い
・はじめの症状は胸痛、息苦しさ、動悸など
・若年者では軽症が多い
などがあります。
(令和3年7月16日)
子どもに対する新型コロナウイルスワクチン
さて、5月31日付でファイザー社の新型コロナワクチン「コミナティ」の添付文書が改訂されて、接種対象者が「12歳以上」になりました。どんないきさつで対象者が広がったのでしょうか。
米国内で12歳から15歳の方の治験が行われ、3月末にその成績が一部発表されました。
それによると2,260名の方が二重盲検試験という治験に参加し、偽薬(ワクチンではない注射)の接種を受けた方1,129名のうち18名がその後に新型コロナ感染症を発症したのに対して、ワクチン接種を受けた1,131名のうちで新型コロナ感染症を発症した方はいなかったそうです(有効率100%!)。
さらに、新型コロナウイルスに対する中和抗体が16歳から25歳のグループと同じ程度以上に上昇し、副反応も同程度でした。
これらの報告を受けて、米国では5月から12歳から15歳の方のワクチン接種が始まりました。加えて6ヶ月から11歳までの小児の治験も開始しているそうです。
ただし、イスラエルから「16歳から19歳の男性で、新型コロナワクチン2回接種と心筋炎発症との間に関連する可能性がある」と報告されています。表現がわかりにくいですが、「ワクチンのせいで心筋症を起こしているかはわからないけど、ワクチンを2回接種した男性で心筋症を起こす人が平均より多い」という意味です。さいわい95%は軽症だったとのことです。米国でも接種後に心筋炎を起こした報告があり、関連を調査しています。
国内で、ただちにこの年齢の方に接種が始まるわけではありませんが、海外での今後の報告に注意が必要です。
(令和3年6月7日)
子どもと新型コロナウイルス変異株
コロナ第4波の襲来とともに変異株が増えてきたと盛んに報道されています。変異株の子どもへの影響について調べてみました。
1.変異株は感染力が強い
もともとウイルスは少しずつ変化しています。例えばインフルエンザウイルスも変異を起こすため、どのような変異株が流行するかをWHOが予想して次の年のワクチンを作っています。
ウイルスのいろいろな変異株ができる中で、人に感染しやすいものや体内で増えやすいものが、人には不都合、ウイルスには好都合なタイプとして生き残っていきます。
現在問題になっている英国株はウイルスのスパイクタンパクという部分がこれまで(従来株)よりヒトのACEという部分につきやすくなっています。その結果従来株と比べると1.4〜1.7倍ヒトに感染しやすくなってしまいました。また、成人では若年者が重症化しやすいとか、重症化するまでの期間が短い(急に重症化する)ことが多いと言われています。
2.変異株は子どもにも感染しやすいかも
子どもにはACEが少ないので新型コロナに感染しにくいのではないか、と言われていましたが、ACEにつきやすくなった英国株は従来株に比べて子どもに感染しやすくなるかもしれません。
東京のデータを見てみると、昨年11月までは1日あたりの陽性者の中で20歳未満の未成年の割合は5%前後でしたが、12月からは8〜10%に上昇しています。
全国のデータでも厚生労働省などの資料を見てみると、2020年よりも2021年に入ってから(5月5日現在)の方が全体のコロナ陽性者の中で、9歳以下、10歳代ともに割合が1.5倍くらい増加しています。
これまでと同様に、小児では家庭内での感染が多いとされています。やはり大人が気をつけて、家庭内にウイルスを持ち込まないよう注意が必要です。
3.感染対策はこれまでと同じ
感染対策は大人と同じです。すなわち
①室内ではマスク着用*
②こまめな手洗い
③三密を避ける
*学校では屋外の活動ではマスクはしなくてもよい、ということになっています。これから暑くなると熱中症対策も必要です。学校外での活動も小学生以下ではマスクはしなくてもよいかもしれませんが、②③は実行して欲しいですし、一緒にいる大人は子どもの前ではマスクをつけていた方がいいでしょう。
(令和3年5月31日)
子どもの新型コロナウイルス感染症の対策は?
子どもは新型コロナにかかりにくいと言われていますが、全体の感染者が増えてくれば子どもの感染も増えてきます。ではどうすればいいでしょうか?
1.大人からの感染を防ごう
文部科学省から発行されている「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル ~「学校の新しい生活様式」~ 」では昨年6月から11月での児童生徒の感染について、「感染経路は小学生の73%(1,252人中 916人)が「家庭内感染」である一方、高校生は「感染経路不明」が35%(1,224人中 431人)と最も多くなっています」とのことで、小学生以下では家庭内での感染が多いことがわかります。つまり、子どもの感染を防ぐためには大人が家庭内に感染を持ち込まないことが最も大切です。
また、中学生、高校生と学校外での活動が増えてくるので、その時に感染対策を意識してもらうことも重要です。
2.感染対策は大人と同じ
感染対策は大人と同じです。すなわち
①室内ではマスク着用
②こまめな手洗い
③三密を避ける
です。
学校や幼稚園、こども園では先にあげたマニュアルや「保育所における感染症対策ガイドライン」といった公的な指針に沿った対応をしていますので、自宅で過ごす時、ご家族で外出するときにご家族みんなで感染対策をしましょう。
3.暑い時のマスク、年少児のマスクは気をつけよう
上に記したようにマスクは感染対策に重要ですが、暑い時には熱中症にかかるリスクがあります。学校では体育の際はマスクは不要とされていますので、暑い時は水分補給を十分する、顔が火照ってしまってマスクを外したいときは他の人と十分距離を開ける、などで対応しましょう。
また2歳未満では正しくマスクを着用できないことや、下のようなリスクがあるためマスクの着用は気をつけましょう、と日本小児科学会からコメントが出されています。
・呼吸が苦しくなり、窒息の危険がある。
・嘔吐した場合にも、窒息する可能性がある。
・熱がこもり、熱中症のリスクが高まる。
・顔色、呼吸の状態など体調異変の発見が遅れる。
(令和3年5月9日)
子どもの新型コロナウイルス感染症の特徴(令和3年2月まで)
子どもの新型コロナウイルス感染症の特徴として、これまでは以下の4点が挙げられていました。
1.子どもは感染者が少ない
日本の人口は1億2500万人で20歳未満は2000万人、約16%だそうです。今年1月までの新型コロナ感染者は全国で約25万人です。そのうち20歳未満は2万人あまり、割合として約8.3%になります。人口の比率で考えると成人の半分くらいの感染者になります。
2.子どもは感染しにくい
保育園、幼稚園、学校などの教育施設のクラスターが少ないこと、また家庭で成人の感染者がいても子どもが必ず感染するわけではないことから、子どもは感染しにくいと考えられています。
3.子どもは感染源になりにくい
子どもは家庭内での感染が多いのですが、その時は兄弟での感染ではなく、大人からの感染と考えられる例が多く、幼稚園や保育園のクラスターでも児童同士の感染より保育士や教員からの感染を疑われる例が多いようです。
4.子どもは症状が軽く重症化しにくい
これらは世界的に認められていたことで、子どもがこうした特徴を示す理由として、
1.ウイルスがヒトの体の細胞に入るために必要なACEという成分が子どもでは 少ない
2.子どもはこれまでに従来型のコロナウイルス にかかっているので、新型コロナウイルスに対してもある程度の抵抗力(免疫)がある
3.子どもは交流する対象が家族、教師、同級生などに限られている
などの仮説があります。おそらくこれらが全て関係して、子どもの感染が少なく、軽症の方が多いのだと思います。
ただし、子ども同士の感染や子どもから大人への感染が全くないとは言い切れないので、マスクや手洗いは大切です。(令和3年4月27日)
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